2018年、東京医科大学が男子優遇の採点をしていて問題となりました。その際に文部科学省より大規模な調査が行われ、多くの大学で女子を不利に扱うような入手手続きが取られていることがわかりました。また、同時に多浪生にも不利な採点をされていたことも発覚しました。実はこれ、医学部内の学生や卒業した医師にとってみると、誰もあえて口にはしないけれど昔からある当たり前の不文律ではあったのです。
女子や多浪生に不利な試験となっていることは常識だった!?
ただし、これを知っているのは親や親しい知り合いが医学部に関連する人でないと厳しいかと思われます。
また、そもそも一部の属性の人を不利に扱うことが倫理的に許されるのかどうかという議論はもちろんありますが、ここではそれはあえて割愛します。この状況下で実際にどの様に受験を攻略すればいいかを考えていきたいと思います。
男子を優遇するシステム
男子を優遇するシステム、これは間違いなく存在します。
医師になってみると逆に、他の業界と同じ様に男性の方が産休や育休をとりづらいという風潮もあります。
そのような現場のマネジメントをしていると、女性の医師が増えて産休や育休をバンバンとられてしまうと、病院が回らなくなってしまうのですね。
言うまでもなく、これは現場のマネジメントの能力不足に問題があります。筆者はそこを改善していきたいと考えていますが、医療の世界において意思決定をしているのは殆どの場合、化石のような価値観を持った人だけです。そのため、内部で力を持って構造を変えていこうとした場合には、一度は理不尽な手続きを経て内部である程度の地位まで進む必要があります。
女性医師の問題でも同じことが言えるのではないでしょうか。筆者はジェンダー論のプロではありませんから大それたことは言えませんが、女性の医師が不正入試を経てでも育ち、現場に声を届けることで徐々に変わっていくと予感しています。
実際どの様に女性を不利に扱っているのか
- 東京医科大学の不正入試にもみられるような女子一律減点は特殊かもしれない
- 男女で得意な科目は違うため、調整可能
- 面接、小論文に点差をつけてしまうと誰も文句は言えない
解説していきます。
一律原点はレアケース?
流石に、女子を一律で減点するというのは今の時代、大学の内部からの批判の声も上がると考えられます。
なので、男女比を調整しようとする場合には入学試験の問題の内容で上手く、結果的に男女比が大学側が揃えたいように揃えられればそれが理想です。
男女で得意な科目は違うので、調整可能
男子が得意な科目で差がつくようにし、女子が得意な科目では差がつかないようにするという手法が取られます。
例えば、数学や物理といった理系科目は男子のほうが得意な傾向にありますので、これを程々の難易度に設定し差がつきやすくします。
逆に生物や英語などは女子が比較的得意な傾向があります。これを高難度、もしくは低難度にするとそれぞれあまり差が付きません。すると女子の比率が下がるのですね。
これは逆の使い方もされていて、女子の比率を増やしたい際には数学や物理の難易度を調整し差が付きづらくすることなどがあります。
しかし、試験の難易度を調節して差が付きやすい科目とそうでない科目を設定する、というのは出題者側からすると至難の業となります。
そもそも、よく差がつく問題を作るのが難しいのですから。
そこで二重に得点調節のポイントを設定されています。
面接、小論文に点差をつけてしまうと誰も文句は言えない
面接、小論文に点数をつけます。
この際、あるていどざっくりとした採点基準はあるでしょうが、筆記試験の採点と比べればどうしても大雑把なものとなります。
そこで、これらの点数で最終的に男女比を調整することが日常茶飯事に行われており、これらの「調整」は先の文部科学省の調査からも不正の判定の対象とはなっていないのです。
浪人生差別も当たり前
これまで主に女子が医学部入試で不利に扱われる、という実情を話してきました。
さて、医学部受験ではもうひとつ、浪人生への不利な採点が暗黙の了解となっています。
特に、何年も浪人を重ねている「多浪生」には厳しいと思われる大学がたくさんあります。
これには、
- 現役で卒業した医師よりも稼働できる年数が短い
- 在学中の成績が芳しくない
といった理由があるかと思われます。ここでも、これの善し悪しの議論は割愛あせていただきます。実態・対策について掘り下げていきます。
浪人生に対しても、問題の調整や面接、小論文試験での得点の調整は行われています。
浪人すると勉強時間が確保できるようになるため、現役の際には対策が追いつかなかった数学Ⅲ・Cや物理・化学・生物などの理科系科目が一般的に浪人生のほうが有利と言われます。逆に、数学や英語は現役のうちから対策が間に合うことも多く、どちらの科目で差が付きやすい問題となるかが勝負の分かれ目となります。
面接、小論文の調整は言うまでもありませんね。
浪人生に不利な大学というのは受験生に共有されています。このブログでもまた再度特集したいと考えています。
現場ではこの実態をどの様に評価しているのか?
筆者の観測範囲では、女性医師は男性の医師と同様に勤務しています。
ただし、前述したように産休・育休は男性の医師はとることは難しいかもしれません。というか、とっている人をみたことがありません。
女性医師は産休・育休をとって職場に復帰しても普通にwelcomeムードで迎えられています。
また女性医師が働きにくい環境を変えていこうというマインドの医師は多いです。そのため、徐々に女性が不利に扱われるという現状は変わっていくと予想はされます。
今必要な対策は?
とはいっても、環境が変わるまで待っているわけにもいきません。上述した様に、理不尽な状況を変えるには自分がなんとかその構造を変える位置まで行く必要があります。
女性、多浪生が医学部受験する際の戦略は、
- 男子に差をつけられやすい科目の補強
- 面接や小論文で古典的な女性の弱みを見せず、むしろ新しい強みをみせる
のがおすすめです。
前者の男子・現役生に差をつけられやすい科目については、その科目をしっかり最低限学ぶ必要があります。合格者平均点が目標となるでしょう。
後者の面接や小論文での対策は、一筋縄ではいきません。
面接では、「将来はこども作る気ある?」「こどもと患者の命どっち優先するの?」「子育てするときは医師の仕事はどうするの?」など散々なことを聞かれます。このような質問をしっかり撃退できるように、まずは「なぜ医師になるのか」という根本的な問いかけを自分にしてみてください。そしてそれに納得行くまで考え抜くことが大切です。そうすれば上記のような質問にも臆せず答えることが出来ると思いますし、目の前の勉強にもより身が入ります。その後の自分の人生で医学部を受験するという選択を振り返ったときに、後悔がないでしょう。
まとめ
- 医学部受験では女子、浪人生が不利に調整をされる
- 調整には一律減点など派手なやり方もあるが稀であると思われる
- 男子や現役生が得意な科目で差が付きやすいように出題、面接や小論文の採点で調整する
- 女子、多浪生は「なぜそもそも医師になりたいか」という掘り下げを深くするべき。面接への答えにもなりますし、勉強にも身が入ります。何より、将来の後悔がなくなります。